都内で働く30代の試行錯誤

田舎での生活に憧れています。 息子(0歳)がいます。

「新百姓 / 1号ー水をのむ」を読みました

「新百姓 / 1号ー水をのむ」を読みました。

新百姓


好きな本屋さんのInstagramのリールで、本誌の表紙の写真と共に「入荷しました」と紹介されており、表紙の写真と「新百姓」のタイトルになんとなく惹かれて、その本屋さんの選書に信頼があったため購入しました。

雑誌「新百姓」とは

システムに封じられた人間の創造性の解放を促す雑誌です。効率や規模の拡大を最優先に追求する経済のあり方、人間一人ひとりがそれに従順であるように求められる巨大な社会システム。そういったものに疑問を持ち、新しい生き方を探究している人たちの問いと実践の物語を編み込んでお届けします。

http://www.paradigmshifter.net/
より詳しい理念: http://www.paradigmshifter.net/hello-world/


上記の理念を最初に読んだときは、「????」と思ったのですが、1冊雑誌を読んだ結果、「資本主義に支配されてお金を”もっともっと”と稼ぐより、衣食住を自分でつくることの豊かさを楽しもう」「最先端の技術も便利だけど、仕組みや経緯を理解せず使うと、依存させられてしまうので要注意」ということだと解釈しました。


また雑誌の中に99個の「テーマ」がマインドマップのように書かれていて、その中に 本誌のテーマ「水をのむ」も入っていました。次号も99個のテーマの中から選ばれるようです。




自分の価値観

祖父の故郷では今も親族が林業を中心に生活しています。小さい頃は「都会=洗練されてかっこいい」と憧れていましたが、今は親族の暮らしこそ「かっこいい・豊か」だと思います。
お金や権力、社会情勢に左右されず、自分の技術で食っていく・生きていくことができるというのは本当に自由で強いと思います。


夫も似た価値観ではあり、将来的に都心から離れたいと思っていますが、今、自分が夫や子と一緒に田舎で生きたいかと言うと「現実的に選択しない」。


自分は、コンビニまで徒歩5分のようなエリアで生まれ育ちました。
自分も本当の田舎暮らしを経験していないのに、都内の企業でやりがいをもって仕事をしている夫を説得する材料もなければ責任を負う勇気もない。子どもを 複数学年が合同で1クラスの小学校に通わせることが子にとって良いことか自信が持てない。自分自身、このあいだそばかすを消すためのレーザー治療をしたような人間で、今、軽トラを乗りこなして朝から畑仕事をするイメージが持てない。Webディレクターの仕事は(悶々とすることはあれど)楽しい。自分の価値観で子どもを「普通に」育てるには、お金が必要でもある。


都心にアクセスしやすいエリアに住んでいるごく普通の会社員だけど、畑を借りて自分で野菜を作ったり、ベランダで太陽光発電してみたり、家のリフォームのときに床下・天井裏の配管がどうなっているか見せてもらったり、自分の生活の中で「自分が使っているものの仕組みが分かるようになりたい」「衣食住について自分でできることを増やしたい」と思っています。

 

感想

上記の通り、「自分が使っているものの仕組みをなるべく知っていたい」「食・住について、最低限生きられる知識と技術を持ちたい」という思いを持っているので、テーマや取材に共感がありました。
また、この本を読んだことで初めて言語化できたこと、具体的な知識として得たこと、新しい考え方など、学びが多くあり、改めて「自分でやろうと思えばできる」の範囲を広げていきたいと思いました。


また、「すべてを自給自足する」ことについて、元々は「可能ならそれが理想だけど、現実的ではない」というような考え方だったのですが、後述の小濱さんのインタビューを読んで、「自覚的に頼る」ことも大事なんだと思うようになり、これは自分の中で大きな変化でした。

 

面白かった取材の紹介(一部引用)

※各インタビュー、引用は500文字以内にしています


システムの中でどうすれば冒険を楽しめるか?ー関野吉晴さん

しょっちゅうアマゾンに行っている医師免許を持った美大の先生のインタビュー

 

一つのオリジンを求めるだけで、いろんなことがわかるんですね。カレーライスの場合はいろんなものが出てくるので、全てやると、全てがわかっていく。
——野菜もお肉も、お皿もですね。塩とか、ご飯も。
関野:自分が日常食べている食事が、いろんな工程を経てここにやってきたってことが、初めてわかる。本来自分でつくるものなわけだからね。


(アマゾンでは「支え合って一緒に生きていく」ことが当たり前という話について)例えばアマゾンだったら、芋やパナナ、魚や果物を穫っても、1週間で腐っちゃうんですね。蓄積できないので、食べちゃうわけです。
蓄積できないってことは、囲い込むことがないわけで。


(お金を使う社会の場合)等価交換なわけです、お金って。(中略)でも、贈り物の場合は、借りができるんですよ。返さなきゃいけない。物々交換でも等価じゃないと、どっちかに借りができて、いつか返さないといけない。わざとそうしてる時もあるから。
——繋がりをつくり続けるために、あえてそうしているわけですね。

 

「自分で作れそうなもの」にフォーカスしがちだったけれど、自分で作るのが難しいものについても意識的に、想像する・調べてみようと思いました。たとえば、あんこは小豆と砂糖で作れる(小豆は畑でも作れる)けれど、チョコレートはカカオをどうするか分からない。カカオの作り方も分からない。
蓄積ができる(穀物→お金)と囲い込みが始まって格差につながる話も(自分だって富裕層ではないけれど)お金はあればあるほど安心とせっせと貯金している自分に刺さった。


どうすれば誰もが「水をのむ」で遊べる未来が作れるか? ー北川力

小型水循環装置(排水を再利用するための装置)を開発した人のインタビュー

洪水災害に遭った岡山の支援をやった時、現地ではみんな「水がない」と言っていた。でも、すぐそこに小川が流れていて、プールもある。だけど僕たちが行くと、「水を持ってきてくれた!」「シャワーを持ってきてくれる人たちが来た!」みたいになって。僕は「なんじゃこりゃ」と思った。「いや、水あるじゃん!」と思ったんですよ。(中略)


それは「ない」んじゃなくて、質の問題ですよね、と。
困った時でも、「誰かが供給する綺麗な水じゃなければ水じゃない」となっちゃってる。なんかこれおかしいよな、と思うんです。だって、そこら辺の川の水を汲んで暮らしてたのに・・・・・・っていう話じゃないですか。
災害時でも日常でも、「何もできない、わかりません」みたいになってる。(中略)


だから、たとえば家も、自分で建てられたり、自分でやれる方がよくない?と思います。だって本質的には生きる根源なんだから。その知識や情報を持った方がよくない?と。まずはそういうものに繋がれるといいよね、というのが僕の課題感です。技術と情報をいかに一般化して、普通の人でも触れられるようにするか。

「生きる根源」を自分で何とかできるようにしたほうがよい、という考えは同じだけど、「みんなが自分でできるようになるためにシンプルな仕組みの装置を開発している」というのが、視座が高いし、知識量・技術力を持っていて本当の強者だなぁと感じながら読んだ。


どうすれば自分たちで「水をのむ」の仕組みをつくれるか?ーヘンリー・グロガウさん

チリの砂漠で海水から飲水を作る装置を設計したデザイナーのインタビュー


僕がデザインについて考えるとき、常に心に留めるのは、将来起こるであろう課題に備えておくということです。PortableSolarDistillerは、非正規の居住区だけでなく、突然大きな災害が起きると公的なシステムから切り離されてしまうような先進国の人々に向けたものでもあります。たとえばニュージーランドや日本のように。僕たちは、ローテクな代替手段を見つけなければならないと思うんです。


「ローテクな代替手段」という言葉は、今後何かを考えるときに自分の中でキーワードになると思った。現地で調達できる材料での設計にこだわっているところが素敵で本質的だと感じた。

 
どうすれば「水をのむ」をこの手でつくり出せるのか?ー小濱達郎さん・愛子さん

山から引いた水を生活に使えるよう自分で濾過装置を作った人のインタビュー

 

(山水を引くために、既に使われていたパイプを増改築したことについて)一から引くのは確かに大変やから、それを今からやれって言われると、まぁさすがにちょっとアレかな、と思うんですけど。それは本当に偉大な先輩方のご尽力の、過去の遺産があるので(笑)。まぁインフラですよね、言うたらね。それはもう有り難く使わせていただいたらいい。


そういう意味では、こういう暮らしの中でね、自分なりにバランス取るというか。全部古い昔がいいってわけでもないし。もちろん車も乗るし。僕はその辺は、両方やって全然いいと思ってますけど。ただ、例えば車にしても、歩いたら大変だけど、やっぱ歩いたからこそ得られる景色とか、ありますよね。


→小濱さんについて、「自力でやる」と「便利な最新のインフラ・道具に頼る」のバランスがすごく良いなぁと感じました。自然や農業の領域には、一定数スピリチュアル強すぎたりヤマギシっぽい思想に至って使命感を持って布教し始める人がいるけど、小濱さんは他人に無理強いする・推奨するどころか、自分でも無理はしていない。良いと思ったことを淡々とやって、楽しくておもしろかったから発信している。大変さも分かっているからこそ安易に人には勧めない。自分も何かおもしろい!と思うことがあったとき、こういう温度感でいたいなぁと思った。

 

これから

この本を読んだことによる具体的な次の行動は以下です。

 

市民農園に申し込みする
 元々申し込みを検討してたけど、「申し込みする」と決めた。
□チョコレートの作り方を調べる
https://naturalharmony.co.jp/tumugi/saijikichocolate/
ひとまずカカオからすり鉢でチョコレート作っている記事を読みました。手間の掛かりようが良くわかる。そしてカカオやコーヒー豆は農家に負担がかかっているとよく聞くし、輸入は船で送られてくるのかしら(重油‥)。簡単に検索しただけでも、作業の片手間にアルフォートをポイポイ食べてはいけないなと感じますね。
□いちいち「オリジン」と「経路」を調べるようにする
□「カレーライスを一から作る」(関野吉晴さん著)を読む
□「アラビアのロレンス」(関野吉晴さん推)を見る