都内で働く30代の試行錯誤

田舎での生活に憧れています。 息子(0歳)がいます。

「あのこは貴族」を読みました

山内マリコ『あのこは貴族』を読みました。

とっても面白かった、古くから続く家柄の良い富裕層に対する見方がこの本で少し変わりました。

Podcastで山内さんが話すのを聞いて、言葉選びが丁寧で かつ自分の考えをきちんと持っている感じが心地よく感じ、山内さんが書いた本を読んでみたくなりました。

 

あらすじ

東京の箱入り娘・ 華子は、30歳を間近に控えて彼氏に振られ、焦っていた。お見合いを重ねてやっと弁護士・ 「青木幸一郎」と出会う。一方、地方生まれの美紀は、経済的な事情で慶應大学を中退。夜の世界を経て、今はIT企業で働いている。腐れ縁の男友達・ 「青木幸一郎」とのだらだらした関係が継続中。育った環境が違って、出会うはずのなかった女二人。同じ男をきっかけに二人が出会うとき、それぞれ新たな視界が拓けて一一。

あのこは貴族 山内マリコ|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー

 

以下の感想にはネタバレ的要素が含まれます。

 

感想

序盤は「うお~!現代にも細雪みたいな世界を生きてる人たちがいるのか~!!しかもお見合い?まじで細雪じゃん!!」と興奮。

 

慶應幼稚舎からの慶応エリート達や 育ちの良いお嬢さん達が、親の引いたレールを走る(≒親の人生をトレースする)ことや、中学から交友関係が変わらなかったりする閉塞的な様子を「うちの田舎と同じだね」と言うのが 新鮮で目から鱗だった。

真逆だと思っていた。関わるカネの多寡、文化の種類に違いはあれど 確かに本質的には似ているのかもしれない。

地元から出ず、20代前半で子を持ち 親と同居する同級生を内心見下していた頃(若くて愚かな頃)もあったけど、今は「親(あるいは義親)の面倒を見て偉いなあ」「早くに子を持つ勇気や責任を持っててすごいなあ」と尊敬する。

一方で何代も続く良い家柄のお嬢さんやお坊ちゃんは、未だに「羨ましい存在」「恵まれた存在」と思っていたけど、ドロップアウトせず続けざるを得ない、自分の代で絶やすわけにいかないというのは、かなりのプレッシャーで大変だなあと思う。簡単な人生なんてないよなあと思わさせられた。

 

自分は学費も家賃も生活費も親に出してもらって、美紀と比べたらよっぽどラクに当たり前のように大学を卒業させてもらった。でも、東京で何の後ろ盾もなく自分でやっていかなくてはいけないという意味で美紀に近い(いや、六本木のラウンジや銀座のクラブで働けるような容姿も知性もないけれど)。

 

映画も見たのですが、夜の世界を辞めたあとの美紀は「よくいる都内で働くアラサー」で、生活感があって、正直、本で読んだ時よりも「憧れる」要素は少なかった水原希子なのに!役者としてすごいね水原希子。そして楽しく働く華子にも。

 

自分で決められない・思ったことを口に出せない性格および立場の華子にも、従属的な立場故の悩みや閉塞感がある。先行きに不安はあれど自分で自由に決められる美紀の方が 精神的に健全に過ごせるだろうと頭では強く思いつつ、それでも 絶対になれないからこそ「ユニクロに行ったことがない」「内気なのに一流ホテルや茶席で品よくしかし少しも物怖じせず当然のように振舞える」華子の育ちに憧れのようなものが残って、そのことに驚いた。

「なりたい」とは別軸で、人はないものに憧れるものだと実感する。

 

わたしは、美紀と同じように「東京で働き、たまに転職もする一人のアラサー」として生活感をにじみ出しつつ自分の生活をやっていく。そしてそれも、ある人から見れば「気楽でいいな」なのかもしれない。